「はぁー」
帰りの電車の中、思わずため息が漏れた。
彼氏って、どうしたらできるんだろう?
ガラス越しに映るカップルをチラリ盗み見しながら、私はまた大きく項垂れる。
世の中にはこんなにもカップルで溢れているのに、私はいつになったら彼氏ができるのだろう?
もう一度ため息が出そうになったとき、タイミングよく電車が揺れ、私はバランスを崩して目の前のガラスへ頭をぶつけた。
「いたっ!」
鈍いゴチンという音と私の小さな悲鳴は、一瞬のうちに電車内の乗客の視線を集める。
恥ずかしさと痛さで頭を押さえながら、隠れるように慌ててうつむいた。
「大丈夫ですか?」
ふいに声をかけられ振り向くと、そこには心配そうに覗き込む大野くんがいて、驚きのあまり心臓が跳ねた。
「……だ、だいじょうぶ」
と言ってみたものの、知り合いに見られていた羞恥心で一気に顔が赤くなるのがわかる。
「お、同じ電車だったんだね」
「姫乃さん案外どんくさいですね。飲み会中、なんか無理してる感ありましたけど、悩み事でもあるんですか?」
悩み事ならあります!
と心の声が叫んでいるけれど、“どうしたら彼氏ができるのか”なんて事を大野くんに言えるはずがなく、私は愛想笑いを浮かべた。
「えっ? いや? ないよ。大丈夫。ちょっと飲み過ぎたのかなー? えへへ」
「じゃあ彼氏に迎えに来てもらえばいいじゃないですか?」
愛想笑いでごまかそうとしたのに、大野くんはしれっとした顔で心臓に悪いことを言う。
「えっ、うん、そうかな? そうだよね? でも忙しいかも?」
上手く受け答えができず、しどろもどろになってしまう。
ちょうど駅に到着するアナウンスがあり、私はそそくさと降りる準備をした。
「私、駅ここだから、じゃあね」
「俺もここです」
「えっ?」
扉が開くと同時に大野くんが降りる。私もその後を追うように、急いで降りた。
「姫乃さんって最寄り駅ここでした?」
「うん、最近引っ越したんだ」
「ふーん」
電車を降りて改札口まで一緒に歩く。
そこで別れるものだと思っていたのに、大野くんは私の帰り道と同じ道を歩いていく。歩道には桜の木が植わっていて、満開の桜が風に揺れている。
「大野くん家こっちなの? 方面一緒だね。全然気付かなかったなぁ」
といっても、私はまだ二週間前に引っ越してきたばかりだ。近所の事はまだよくわかっていないし、会社